【製紙業界研究|2023年度最新版】ESの書き方から面接対策まで徹底解説!
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日本の近代製紙工業が始まって100年以上が経過し、かつて主原料であった国産木材が今では輸入パルプを中心とした外国産木材にシフトチェンジしました。
原料のシフトチェンジがなされる過程の中で、広汎な樹種の利用技術開発や設備の増設といったスケールメリットを狙った各種製造設備の拡大の波が押し寄せ、日本の製紙業界は過度なシェア争いを余儀なくされました。
しかし、今後は環境問題への対策や電子化、ペーパーレス化による紙市場の縮小といった新たな条件が付される環境下で、製造効率の向上、製品の競争優位性の維持を行っていかなければなりません。
そのためには、先端技術をうまく活用し、裾野を広げた技術開発が求められます。
そんな、今後の動向が期待される製紙業界について、きちんと理解できている人は少ないのではないでしょうか。
生物学専攻の就活生が多い製紙業界。日本の森林整備に参画する企業も多く、その事業は国内外に及びます。
この記事では、製紙業界の大まかな概要と市場規模などの解説と、主要企業の動向や就職に必要な情報など包括的にお届けします。
目次
製紙業界とは
製紙業界は紙や製紙の原料となるパルプを主に取扱う業界です。
紙は普段の生活に非常に密接しており、新聞紙やダンボール、トイレットペーパー、ナプキンといった日用品から生理用品まで幅広く製造しています。
また研究開発の分野も製紙業界が活躍しています。現在、有力視されているのがセルロースナノファイバー(CNF)です。現段階では製造コストがかかってしまいますが、その汎用性は非常に高いです。
例えば、車の部品にもCNFを混合させた製品の利用が注目されています。鉄よりも軽量かつ高強度の物理特性を有しており、さらに植物由来のため次世代型材料として活況を呈しています。
さらに、環境問題の一つとして挙げられるプラスチックごみによる海洋汚染を受け、世界的に店舗展開している飲食店やコンビニなどがプラスチックストローの使用中止を表明しました。
その代替製品として、環境循環性と生分解性の両翼を持つ素材で製造された、紙製ストローの導入も本格的に進められています。
このように、製紙業界は幅広く事業展開をしており、大学と共同研究をするなど研究開発にも積極的に取り組んでいます。
日用品の製造から環境負荷を減らすための先端研究まで行い、新たな可能性を模索する業界が製紙業界になります。
製紙業界は基本的に、原料を調達し紙を製造している会社のことをいいます。そこからの流通に関しては、商社や代理店などが受けもつ場合が多いです。
そして、製造業を生業とする製紙会社は、専門分野を取扱う会社が多いため、会社の種類は細分化されます。具体的には、総合製紙、家庭用製紙、板紙、パルプ、製紙加工品などが挙げられます。
総合製紙メーカー
総合製紙メーカーは、段ボールや紙パックといった日用品から化成品、バイオマスエネルギー、アグリ事業、木材・建材など総合的に事業を行っています。
総合製紙メーカーは、幅広い事業を展開しているだけでなく、海外にも多くの拠点を持っていることが特徴としてあげられます。
冒頭で述べたように、製紙業界の原料は外国産木材が主であり、その拠点を海外各地に置くことで効率的な原料調達が行えるからです。そのため、海外での勤務も希望すれば可能になりやすいです。
板紙メーカー
板紙メーカーは、主に包装用の製品が圧倒的に多いです。
最も主流なのが段ボールで、他にもティッシュ、お菓子などの個包装や化粧箱、ジグゾーパズル、絵本、トイレットペーパーの芯なども板紙メーカーの製品として挙げられます。
板紙は高い古紙利用率を維持しており、再生産可能で循環的な製造を目指して製品開発に取り組んでいます。
また、板紙メーカーは素材を取扱うことが多いため、そのほとんどが加工メーカーと密接に繋がり包装サービスを展開しているのが特徴です。
パルプメーカー
工業的に大量生産可能な洋紙の主原料となる木材から、食物繊維(大半がセルロース)を取り出しパルプを製造します。
古紙と混合させた製品の製造を行ったおり、主な用途は、印刷情報用紙や新聞紙、トイレットペーパーやテッシュ等が挙げられます。
パルプメーカーも、ペーパーレス化の影響を受け、紙の製造以外の分野へ進行してきています。
CNFの開発がその典型的な例で、自動車部品や建材、また鉄道などの交通インフラへの応用が期待されており、収益化に繋がれば大きく躍進すると思われます。
また、原料がパルプ、古紙であることから、森林環境と密接に関わる産業であるため、森林事業や森林整備事業も積極的に行っています。
製紙業界の職種
製紙メーカーを志望する就活生にとって、どのよう職種があり、採用応募条件があるのか把握しておかなければなりません。
どの企業においても詳細な仕事内容は、実際に就職してからでしか分かりませんが、最低、就活中は大まかな分類や方向性を事前に調べ、志望動機に繋げていく必要があります。
志望する職種であっても、応募条件を満たさなければその職種で採用されることはないので注意が必要です。
研究開発職
研究開発では、アカデミックな基礎研究ではなく主に顧客の要望に応え、製品に活かすための研究を行います。そのため、研究だけでなく製品開発も担う職種として研究開発職があります。
生活者の視点で調査、製品設計を行いその不満を解消していくことが重要となってきます。
良質な製品開発に向けて、常に今求められている課題について挑戦していくため、自社製品への深い理解や改善点を多角的な観点から考えていかなければなりません。
また、製品の原料を変えたり調整したりする場合、製造工程から見直さなければならないので、工場の人達とのコミュニケーションも重要となります。研究成果の内容や製品開発の意義などを分かりやすく伝える意識を持たなければなりません。
研究開発職は高い専門性を要求される職種なので、応募条件は大体理系の修士課程を修了した学生に限られます。これは製紙メーカー問わず、研究開発職に就きたい学生がいるのであれば、大学院卒はほぼ必須といえるでしょう。
生産管理職
生産管理職は主に製造工場に勤務することになり、調達した原料を製造工程に従って加工し製品にする管理が主な業務になります。
生産ラインの計画、立案、コスト管理など生産に関わる全般を担っており、自社製品の品質に直結する重要な仕事になります。
そのぶん、会社に対する貢献は大きいでしょう。また、バイオマス工場の勤務も生産管理職が担う場合があります。
原料調達職
工場で使用するバイオマス燃料や製紙原料を調達する職種になります。
商社などを通じて、良質な木材チップを競争力ある価格で買付けるため、タフな交渉力が求められるケースもあります。
工場で製造する燃料や原料の安定供給が最大の課題であり、さらにサプライヤーとwin-winの関係性を維持できるように務めなければなりません。
また、原料調達は、環境や社会情勢、市場の変化によって価格や仕入れ量が変わってきます。そのため、常にグローバル社会を意識しながら仕事を行っていきます。
営業職
いわずもがな会社に利益をもたらす大黒柱です。
書店やコンビニなどに陳列する雑誌やコミックなどの身近な紙から、紙おむつなどのヘルスケア製品、牛乳パックなどの容器に至るまで、自社で製造したパルプや製紙加工品の販促活動を行います。
未経験者でもできますが、市基礎的な専門知識と自社製品の特徴については、最低でも頭に入れてからが腕のみせどころです。
顧客のウィークポイントを訴求し、自社製品の強みとマッチングさせて購買意欲を高めるといった営業スキルはもちろん、ビジネスやマーケティングスキルも必要とされます。
製紙業界の歴史
紙は紀元前2世紀頃、中国で発祥したといわれています。
西暦105年頃に蔡倫(サイリン)という後漢時代の役人が、麻等の草木類を灰汁に漬け、臼などで細かく粉砕し、その後、水洗いにて得たパルプを水で分散させながら抄き上げる製法が始まりといわれています。
中国での製造方法は、東西へと広がっていきます。朝鮮半島へは4〜5世紀頃伝わり、次いで日本に伝わりました。
その後、シルクロードを経由して西に広がり、793年にバクダート、10世紀頃にはダマスカスに製紙工場が作られ、イスラム文化が急速に発展しました。
また、900年頃にカイロに製紙工場、1100年頃にはモロッコで紙の生産が開始されました。製紙技術は、モロッコからスペインに伝わり、1150年にはヨーロッパで初めてとなる製紙工場が建設されます。
1189年にフランスで初めてキリスト教国で製紙工場が建設され、1391年にはニュールンベルク、1491年にポーランド、1498年にはオーストリアで次々と製紙工場が稼働し始めます。
イギリスでは1494年に製紙工場が建てられ、後に始まる産業革命により、草木等を原料とした手作業の中国式の製造方法が、木材を原料とする機械方式へと変遷を遂げます。
この、イギリスの製造方法を基盤とした製造プロセスが、近代製紙業の始まりとなります。
その後、1920年代アメリカで、包装材とティッシュペーパーが開発されたことで、紙の需要は倍以上に膨れ上がりました。薄弱な紙を、強度と耐久性を要する包装材(段ボール、板紙など)にしたことは製紙業界の最大の発展の一つでした。
それと同時期に、漂白剤として二酸化塩素が開発され、現在のパルプ産業の原型が作られました。これらの技術は第2次世界大戦後に日本に導入され製紙産業は飛躍的に発展しました。
製紙業界に向いている人
外国語を習得しいてる人・習得するのが苦じゃない人
製紙会社は主に中南米から原材料を調達しています。業務を遂行する上では外国語での取引やコミュニケーション、また書類に目を通す機会が多いです。
そのため、製紙業界への就活を考えている人は外国語を習得、または学習意欲が高い人が向いているといえるでしょう。
もちろん、社員全員が日常的に外国語に触れるわけではありませんが、自分のキャリアを考えたとき、海外勤務を通じてキャリアアップをしたいと考えている人は積極的にエントリーしてみることをお薦めします。
クリエイティブな人
製紙会社の業績は比較的安定していますが、今後訪れるペーパーレス化への対応策を練っていかなければなりません。そうなると、既存のやり方でなく枠にとらわれない発想をしていき、業績を維持、あるいは伸ばしていく必要があります。
そのため、柔軟性を持ったクリエイティブな人が製紙会社の今後を担っていく可能性があります。
クリエイティブな発想の持ち主で、会社の将来を担っていきたいと考える人は、大きな仕事を任せられるチャンスで活躍できると思われます。
転勤が苦でない人
工場や営業所などを多く持っている企業の場合、転勤が多くなる可能性があります。
また、大企業は海外にも拠点をもっており、海外に駐在することもあります。そのため、いろんな場所で住むことが苦に感じない人は向いているでしょう。
いろんな人とコミュニケーションをとることが好きな人
製品をつくるには、製造していく過程でいろんな人とコミュニケーションを取りながら完成までもっていきます。一人で完成させる製品はほとんどありません。
そのため、関係者と密にコミュニケーションをとる機会も増えます。
目標に向かって協力することに楽しさを感じる人は、製紙メーカーの従業員に向いています。
製紙業界の市場規模
市場規模の推移
製紙業界の過去11年間の業界規模の推移(出典:業界動向サーチ、グラフ作成:CareerMine)
2020年から2021年の化学業界の業界規模(主要対象企業29社の売上高の合計)は4兆9,630億円になっています。
国内における2020年の紙、板紙の総生産量は前年比10.0%減の2287万トンになりました。内訳は、紙は前年比17.0%減の1121万トン、板紙は2.0%減の1165万トンになっています。
近年では、デジタル化が進みペーパーレスが進んでいます。そのため、「用紙」需要が低迷しているものの、ネット通販が日常インフラ化したことにより段ボールの需要が伸びてきています。
大手製紙会社は段ボール原紙の製造に舵を切ってくるようになりました。また、ティッシュやトイレットペーパーといった衛生用紙は、依然堅実に需要が伸びています。
また、海洋プラスチックゴミ解決に向けた「脱プラスチック化」による需要増加も見込まれます。
ストローやペットボトルなどのプラスチック製品の代替として紙製品に注目が集まっています。
さらに、脱プラスチック事業として植物由来の新素材開発への巨額投資が予想され、新たな収益源確立に向けた動きが見られます。
製紙業界トップを走る大手製紙会社のM&Aや海外市場の開拓も一段と加速し始めています。
2018年に製紙業界のトップを走る王子ホールディングスは、千葉に国内最大級の段ボール工場を建設しました。
また、2019年3月には三菱製紙との業務提携を表明しており、事業拡大に向けた動きが活発化しています。
海外事業では新たに中国に工場を建設し、マレーシアのGSペーパー&パッキングの買収を行い、2018年から2020年にかけてベトナムやマレーシアといった東南アジアを中心に、段ボール製造工場の新設や増設などを行っています。
2番手を走る日本製紙も王子ホールディングスと同じく段ボール原紙製造に注力しています。
2015年に特種東海製紙と段ボール原紙事業の統合し、海外事業ではオーストラリアンペーパーの買収を2009年に行いました。
さらに、2019年には、オーストラリアの包装メーカーであるオーロラリミテッドから、段ボールとパッケージ事業を買収しています。
大手板紙専業メーカーであるレンゴーも段ボール事業の拡大を図っています。
三和段ボールを2018年に買収し、2019年には2社の段ボールケースメーカーの子会社化に成功しています。
製紙業界におけるトレンド・話題
日本製紙と日本コカ・コーラが「持続可能な社会構築で協働基本合意書」を締結
日本製紙と日本コカ・コーラの両者は2021年8月1日で「持続可能な社会の構築に関する協働基本合意書」を締結しました。
両社は2013年9月1日から2021年3月31日まで「森林の持つ多面的価値の保全及び地域の持続的発展に関する協働基本合意書」を締結し、森林の多面的価値の保全と地域の持続的発展に協働してきました。
さらに、2030年までの約10年間、持続可能な社会の実現に資する取組みを具体的発表しています。
取り組みの骨格は「資源の循環・保全」、「地域社会の発展」、「多様性の尊重」の3分野に分かれています。
資源の循環・保全に関しては、日本製紙が所有する菅沼社有林の一部の森林の保全活動を行っていくとしています。
また、日本コカ・コーラの飲料容器の紙パッケージ化、CO2の排出削減に向けた活動を協働に行っています。
地域社会の発展においては、グリーンインフラ活動を、多様性の尊重では、女性の活躍推進、LGBTQに対する理解促進などを両社が協働して行っていく予定になっています。
参考:PRTIMES
チップ船の荷役クレーン自動運転の試験に成功
相浦機械は、8月下旬に日本製紙、日本郵船と共同開発している木材チップ専用船向けクレーンの自動運転による荷揚げ作業を実施しました。同取り組みは世界初となっています。
自動運転による荷揚げ作業は木材チップ専用に使われているGrowth Ringで行われました。
クレーン運転者が同席する中、4時間程度、木材チップの荷揚げ作業を自動運転させました。
その結果、当初の目標であった貨物の約7割程度を自動化することに成功し、外部から見学していたクレーン運転者からは自動運転でも安心できるといった感想がよせられました。
相浦機械は今後、自動運転の有効性を踏まえて製品化を進めていくとしています。
また、日本製紙は各チップ船への自動運転の導入を検討し、日本郵船は、クレーン運転者の負担を軽減させる技術開発に協力の意向を示しています。
参考:PAPER MALL
製紙業界における主要企業の解説
大王製紙株式会社
社名 |
大王製紙株式会社(英名:Daio Paper Corporation) |
設立 |
1943年5月5日 |
資本金 |
539億円(2021年3月31日現在) |
従業員数 |
12658名(連結 2021年3月期) |
平均年収 |
620万円 ➡︎詳しくは「年収チェッカー」をCHECK! |
事業内容 |
・紙・板紙・パルプ及びその副産物の製造加工並びに販売 ・ 日用品雑貨の製造加工並びに販売 ・ 機能性フィルム、粘着シート及び粘着剤等合成樹脂材料の製造 加工並びに販売 ・ 前各号に関連するプラントの設計、据付、売買並びに技術指導 ・ 紙類・パルプ類製造加工に係る原材料・燃料の製造加工並びに売買 |
日本の大手総合製紙メーカーで就活生から人気が高い企業です。
大王製紙の有名なブランドとして「エリエール」があり、製紙業界第4位のシェアを誇ります。
大王製紙の主要工場は、愛媛県の三島工場と岐阜県の可児工場が挙げられ、全体の工場の約半分がこの2県に集中しています。
大王製紙は1943年に、四国紙業などの14の企業が合同となって設立され、当初は和紙の製造販売を中心に行っていましたが、1947年からは洋紙の製造も開始しました。
現在は、様々な製品を手掛けています。
王子ホールディングス株式会社
社名 |
王子ホールディングス株式会社(英名:Oji Holdings Corporation) |
創業 |
1873年2月12日 |
資本金 |
103880百万円(2021年3月末現在) |
従業員数 |
36034名(連結2021年3月末現在) |
平均年収 |
841万円 ➡︎詳しくは「年収チェッカー」をCHECK! |
事業内容 |
・産業資材 段ボール原紙事業、段ボール加工事業、白板紙、紙器事業、包装用紙、製袋事業 ・生活消費財 家庭紙事業、紙おむつ事業 ・機能材 特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業 ・資源環境ビジネス パルプ事業、エネルギー事業、植林・木材加工事業 ・印刷情報メディア 新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業 ・その他 不動産、エンジニアリング、商事、物流 ほか |
王子ホールディングスは製紙業界最大手の王子製紙の親会社です。売上高は1兆円を超える日本でも有数の会社になります。
1949年に苫小牧製紙株式会社として設立され、様々な企業合併等を繰り返し現在のような形態になりました。
王子製紙は日本国内に5箇所の工場を持ち、新聞用紙、印刷用紙、情報用紙等を取り扱っています。
また王子ホールディングスの事業は多岐にわたり、産業資材、生活消費財などの段ボール、衛生用紙などを拠点に、機能材、資源環境、印刷メディア等を手掛けています。
そして、国内シェア1位である王子ホールディングスが次に拡大を目指しているのがアジア圏です。
マレーシアやシンガポールなどの東南アジアの経済は急成長を遂げており、そこに標準を合わせた海外事業の展開を狙っていると予想されます。
日本製紙株式会社
社名 |
日本製紙株式会社(英名:Nippon Paper Industries Co., Ltd.) |
設立 |
1949年8月1日 |
資本金 |
1048億73百万円 |
従業員数 |
16156人(連結2021年3月31日現在) |
平均年収 |
657万円 |
事業内容 |
・紙事業 ・紙パック事業 ・ケミカル事業 ・エネルギー事業 ・アグリ事業 ・セルロースナノファイバー事業 ・木材・建材事業 ・レジャー事業 ・海外展開事業 |
日本製紙は王子ホールディングスに次いで、業界第2位の製紙会社です。
前身となる企業は十條製紙、東北振興パルプ、山陽国策パルプ、大昭和製紙の4社で、会社設立年度は十條製紙の設立年度である1949年になっています。
また、十條製紙と山陽国策パルプの合併する際に日本製紙と社名を変更しました。
日本製紙の主な事業は、紙事業、紙パック事業、ケミカル事業、エネルギー事業、アグリ事業、セルロースナノファイバー事業になります。
他にも、木材・建材事業やレジャー事業に参画していますが、メインはあくまで紙に関する事業になります。
製紙業界おける主要企業の採用動向
大王製紙株式会社
- 小さな発見に気付けることができ、アイデア豊富な人
- 先入観を捨てて常にチャレンジできる人
- 大きな仕事に意欲的な人
大王製紙は「人に、五千年ぶりのイノベーションを。」を目指し事業を行っています。
そして、「人類の未来のために、紙の未来を考える」をビジョンに掲げています。
生活と密接に関係している「紙」に関連した新商品を考えつくには、日常の中からヒントを得なくてはいけません。その中から人気商品を生み出すには、思いつきそうで思いつかないアイディアを考えつく必要があります。
そのため、日常の小さな発見からアイディアを生み出せる人は採用されやすい傾向にあると考えられます。
また、世の中の価値観を刷新する商品の開発には、これまでの先入観を取り払い、未来を恐れずにチャレンジすることも重要となります。
社員の中には、若手から大きな仕事を任せられる機会もあるそうです。そのため、大仕事に対し、責任やプレッシャーを重荷に感じるのではなく、鼓舞できる人の存在を求めています。
採用の前準備として、自分が感じる日常の小さな発見、また、どのような物事に対しチャレンジしてきたかをまとめておくと良いでしょう。
王子ホールディングス株式会社
- グローバルな視点の人
- 弛まぬ自己変革ができ、チャレンジング精神に富んだ人
王子ホールディングスの経営理念は「革新的価値の創造」、「未来と世界への貢献」、「環境・社会との共生」です。
王子グループは、多様な事業を展開し、海外売上高比率約30%にのぼるグローバル企業です。そのため、グローバルなフィールドで活躍できる人材を求めています。
日本の経済や問題だけでなく、世界的な経済や問題について関心を持って働くことが重要になってきます。
また、経営理念にもある通り、チャレンジ精神をもち激動する社会変化にも柔軟に適応し成長できる人は採用されやすいと考えられます。
学生時代から海外の文化に触れるなどし、日本を俯瞰的に捉える視点や、CNFやパルプに関連した国際ジャーナルに掲載されている最先端の研究について自分の意見を交えながら話せるといいでしょう。
日本製紙株式会社
- 豊かな未来の創出に積極的に貢献したい人
- 責任と誇りを持って仕事に取り組める人
日本製紙のスローガンは「木とともに未来を拓く」になります。
環境問題や資源枯渇といった世界的な課題に対して真摯に向き合い、未来の子どもたちを豊かにするために責任ある行動を心がけていることが重要となります。
会社を通じて、どのような未来を実現させたいのかを明確にしておくことをお薦めします。
地球で生命維持活動を続けていく上では、環境問題は切っても切り離せない関係にあります。そのため、自分がどのような環境問題に関心を持ち、何を実践しているのかを話せると良いでしょう。
製紙業界の採用スケジュール
大王製紙株式会社の採用フロー
※あくまで2022年度卒のスケジュールの一例となります。最新の情報は会社ホームページをご確認ください。
<22年度卒の場合>
3月中旬〜末:エントリーシート提出、WEB適性検査受験
一次面接
最終面接
内々定
事務・営業系総合職の場合は、一次面接の前にグループディスカッションがあるので注意しておきましょう。
一方の、技術系総合職の場合はグループディスカッションがなく、エントリーシートの提出とWEB適性検査を通過した場合、そのまま一次面接となります。
採用スケジュールの詳細は、企業ホームページの採用情報からマイページに登録して詳細を確認しましょう。
王子ホールディングス株式会社の採用フロー
※あくまで2022年度卒のスケジュールの一例となります。最新の情報は会社ホームページをご確認ください。
<22年度卒の場合>
会社説明会
エントリーシート、成績証明書の提出
書類選考、適性検査
面接(複数回)
内々定
王子ホールディングスの採用は、王子マネジメントオフィス株式会社での一括採用の後、各グループ会社への配属となります。
大学院の人は、学部時代の卒業証明書と成績証明書も提出となるので注意しましょう。また、推薦応募の人は大学教授の推薦書も必要となります。
採用スケジュールの詳細は、企業ホームページの採用情報からマイページに登録して詳細を確認しましょう。
日本製紙株式会社の採用フロー
※あくまで2022年度卒のスケジュールの一例となります。最新の情報は会社ホームページをご確認ください。
<22年度卒の場合>
会社説明会
書類選考
面接(複数回)
内々定
書類選考では、エントリーシート、学業成績証明書、卒業見込証明書、健康診断書が必要となります。また推薦応募の場合は、推薦書が必要となります。
採用スケジュールの詳細は、企業ホームページの採用情報からマイページに登録して詳細を確認しましょう。
製紙業界のインターン情報
大王製紙株式会社
大王製紙のインターンシップは、「機械・電気系」、「事務・営業系」、「化学系」の3つのコースに分かれています。
それぞれ開催される日付が異なり、各コースによって内容が異なります。2021年度に開催されたインターンシップは全てオンライン開催となっています。
<機械・電気系>
世界最大級の三島工場(愛媛県)での製造現場を紹介し、安全業務に関して、ケーススタディを体験します。また、社員が日々行っている業務の紹介などもあります。
開催時期:10月〜11月中
開催地域:WEB
実施日数:1日間
応募締切:2021年10月31日
参加の流れ:エントリー→セミナーの申込み→審査→参加可否についての連絡
<事務・営業系>
製紙メーカーの営業社員が普段行っていることを体験します。営業の商談をロールプレイング形式で行います。
開催時期:12月1日〜12月24日までの間
開催地域:WEB
実施日数:1日間
応募締切:2021年11月7日
参加の流れ:エントリー→セミナーの申込み→ESの提出→審査→参加可否についての連絡
<化学系>
家庭紙製品の開発業務を体験します。実際のお客様が感じている製品への思いから新たなニーズを発見し、それらを解決できる製品開発を行っていきます
開催時期:10月〜11月中
開催地域:WEB
実施日数:1日間
応募締切:2021年10月31日
参加の流れ:エントリー→セミナーの申込み→ESの提出→審査→参加可否についての連絡
王子ホールディングス株式会社
王子ホールディングスは、エンジニア職、研究職の2種類を対象に夏季1day仕事体験をオンライン形式で実施しています。
<研究職>
会社概要説明、研究内容の説明、事前ワークの発表、先輩社員との座談会があります。また、事前ワークのテーマは、パッケージング分野、パルプ複合素材分野、紙・パルプ分野、水処理技術分野があります。
開催時期:9月15日、9月16日
開催地域:WEB
実施日数:1日間
応募締切:8月18日
参加の流れ:エントリーシートでの選考を行い、合格した人が参加可能
<エンジニア職>
会社概要説明、エンジニア職の業務についての説明、先輩社員との座談会
開催時期:9月9日、9月13日
開催地域:WEB
実施日数:1日間
応募締切:8月25日
参加の流れ:エントリーシートでの選考を行い、合格した人が参加可能
日本製紙株式会社
日本製紙は、「エンジニアとして本気で成長するための3日間」と題したインターンを行っています。日本製紙の中核工場のリアルな生産現場を体感します。
内容は、会社説明、業務説明、入構教育、現場見学、機械・電気系分野出身の先輩社員との交流会、グループワーク等となっています。
開催時期:未定
開催地域:静岡
実施日数:2〜3日間
応募締切:2月11日
参加の流れ:エントリーシートと面接での選考を合格した人が参加可能
業界研究のやり方
業界研究においては大きく3つのステップで行っていくことで理解することができます。
(1)業界の全体を知る
<業界の構造を把握する>
日本市場を構成する企業は多種多様なビジネスモデルを展開しているため、市場全体を把握するのは難しいです。特にBtoB企業はあまり認知されていない場合が多いですが、優良企業が数多く存在します。
そういった企業を取りこぼさぬように、まずは自分の興味がある業界をピックアップし、リサーチをして大まかな全体像を把握していくことが重要となります。
(2)業界の深堀り
<業界の特徴を把握する>
次に業界が取り扱う商品やサービス、どういった顧客形態であるかを把握していきます。
例えば企業に向けた商品なのか(BtoB)、消費者に向けたサービスなのか(BtoC)などを知ることは業界を理解する上で欠かせません。
(3)業界の動向把握
<業界の安定性・将来性について知る>
最後に業界の市場規模や、今後の見通しなどを知ることが非常に重要となってきます。業界の売上高やシェア率などが高いと安定性がある傾向にあります。
将来性について知ることは少し難しいですが、テクノロジーの発展や環境対策への取り組みといった現段階での複数の要素を加味して予測していくことになります。
製紙業界の業界研究
製紙業界についても上記で紹介した3つのステップで分析をしていきましょう。
(1)業界の全体を知る
製紙業界を研究する際には、基本的に3つの分野「総合製紙メーカー」「家庭用製紙メーカー」「板紙メーカー」に分けることができます。
まずは、この3分野について理解していきましょう。
総合製紙メーカー |
王子ホールディングス、大王製紙、日本製紙、三菱製紙、北越コーポレーション、中越パルプ |
家庭用製紙メーカー |
王子ネピア、日本製紙クレシア、和光製紙 |
板紙メーカー |
レンゴー、王子マテリア、大石産業 |
(2)業界の特徴を把握する
化学業界の3つの分野を理解したら、次にその分野の中にどんな業種・職種があるのかを見ていきます。
総合製紙メーカーは、「原材料の仕入れ」、「製品開発・製造」、「販売」全てを一貫して行います。
事業規模が大きいため、多くの製品づくりを自社だけでできます。市場の占有率が高いほど利益率の調整ができることが強みです。
また、潤沢な費用や予算を使い研究や開発に投資することができるため、希少な製品開発を手掛けられる特徴があります。
家庭用製紙メーカーは、主にトイレットペーパーやティッシュ、タオルペーパーなど生活と密接に関わっている製品が多いです。
板紙メーカーは大別すると「段ボール原紙」、「紙器用板紙」、「雑板紙」の3種類になります。
特に段ボール原紙は、現在総合製紙メーカー各社も力を入れており、今後の需要が期待されます。
紙器用板紙は、白板紙や黄板紙、色板紙といった白程度あるいは、着色されている板紙のことを指します。
雑板紙は、石膏ボードに使用される板紙、防水原紙など建材原紙などがあります。
(3)業界の安定性・将来性について知る
製紙メーカーは、ティッシュや段ボール、タオルペーパーなど、私たちの生活に必要不可欠な製品をつくり出しています。そのため、業界自体はなくなることはないでしょう。
しかし、今後は人口減少やペーパーレスに伴う国内市場の縮小が懸念されますが、CNFやプラスチック代替物の開発が進み普及していくことで、業界自体は新たなステージに突入していくものと予想されます。
また、世界的に段ボールの需要は今後も伸びてくると考えられます。
将来性に関しては、ペーパーレス化による若干の不安が残りますが、当面の問題はなさそうです。
製紙業界のES対策・攻略法
ESの書き方
ESを記入する際には、「なぜその会社を志望しているのか」と「自分の人物像」がきちんと伝わるように記入することが重要です。
一つの業界をとっても非常に多くの企業があるため、会社の特徴をおさえたうえで、自分の実体験や将来のビジョンを照合させる内容で作成しましょう。
中でも志望動機では「なぜ○○業界なのか」「なぜその業種なのか」「なぜその企業なのか」が必要不可欠となります。
この3点を体系立ててロジカルに説明しましょう。
製紙業界におけるESポイント
ESでは論理的に伝わる内容を書くことが大切なので、結論ファーストで書かれ、読む人に分かりやすい文章を書きましょう。
例えば
上記の順で構成していくと分かりやすい文章になります。
製紙業界は、グローバルな視点を持つ人材、チャレンジ精神旺盛な人材を求めています。
これらを踏まえ、ESに記入する際は「海外マーケットへの意欲的姿勢」「変革を求め挑戦した経験」についてしっかり考えて書くことが重要です。
ESを見ながら面接する企業もあるので、受け答えができるようにしておきましょう。
■海外マーケットへの意欲的姿勢
総合製紙メーカーは日本のみならず世界中で様々なビジネスを展開しており、グローバル企業化しているといっても過言ではありません。
ビジネスを円滑に進めていくには、関わる人とコミュニケーションをとりながら同じゴールに向かって行かなければなりません。
海外でのビジネスを行っていくにはある程度の英語力が必須であり、異文化との交流も盛んに行います。
学生時代に海外留学した経験、海外インターンでの経験、海外旅行の経験等を踏まえ、自分がどのようなことを感じ、会社を通じてどのように海外マーケットに進出したいのかを書くことが重要です。
また、応募企業がどのような事業を海外で行っているのかを下調べし、自分の培った経験がどのように活躍できるのかアピールすると、なお良いでしょう。
■変革を求め挑戦した経験
製紙メーカーは普段の生活を一新する商品開発を目指しています。消費者の生活がより豊かにかつ地球環境にも配慮した商品提案をしていく必要がります。
また、若手から大きな仕事をアサインされることも多いため、やりがいや成長を求めるハングリー精神も求められます。
消費者の普段の何気ない行為からヒントを得て革新的な製品を造ろうとする意思や、大きな仕事を経て成長したいという意欲的な行動をアピールできると良いでしょう。
様々なことに挑戦できる環境であるからこそ、学生時代に具体的にどのようなことに挑戦してきたのか、また現状の状態や環境に満足することなく、より良い結果を求め行動した結果までエントリーシート(ES)に記入できると良いです。
製紙業界の筆記試験対策・攻略法
製紙業界はSPIに似た独自の試験を実施する企業が多い傾向にあります。
過去の実績が必ずしも反映されるとは限りませんが、それでも過去実績から傾向をつかみ、効率よく対策を進めておくことが大事です。
依然として新型コロナウイルスの影響で、自宅受験型のWebテスティング方式の企業も多かったようです。
経済の先行き不安や、企業業績の減退によって、就活も売り手市場から買い手市場に移っていく傾向にあります。買い手市場の時は、企業の採用方針が保守的となり、早期に且つ確実に仕事がこなせる人材を求めます。
そのため、ここ数年以上、能力検査・適性検査は重視される傾向にあると考えられます。早いうちから試験対策にも取り組みましょう。
製紙業界の面接対策・攻略法
面接でよく聞かれる質問と回答のポイントを紹介します。
- 紙、パルプ業界を選ぶ理由
- 学生時代にがんばったことは
- 研究内容を分かりやすく説明
- どんな商品に携わりたいか
紙、パルプ業界を選ぶ理由
数ある業界の中から、なぜ紙、パルプ業界を志望したのかその理由を聞かれることが多いようです。
やはり、原料の多くが木であるがゆえ、地球環境問題を交えた志望動機を考えると良いでしょう。森林の役割や木の優位性についてしっかり知識を深め、他の業界との違いを明確化することが重要です。
また、「なぜこの会社を選んだのか」という同じような質問も併せて聞かれることも多いです。この質問に対しては「同業比較」を行うことでより明確にすることができます。
インターン参加や企業カタログなどを取り寄せ、事前リサーチし、他社との違いを把握した上で、「なぜA社ではなく、B社なのか」を常に追求することで、より深めていくことができます。
学生時代にがんばったことは
この質問と「自己PRをしてください」に関してはESで記述した内容の深めていくことが多いです。
こういった質問の本質的なところは、「どういったことに興味をもったのか」「何が自分の武器であるのか」「周りを巻き込めるか」「高い目標に対して工夫をしながら努力できるか」といった、人物像を把握するために聞かれます。
自分の人物像についてしっかり把握し、強みについてしっかりアピールできるようにしておきましょう。
研究内容を分かりやすく説明
製紙メーカーは基本的に技術系の会社が多いことを理解しましょう。そのため、技術系の面接では研究内容に触れた質問が多いようです。
仕事や職種にも十分対応できるスキルや能力を持っていることを、自分の研究内容から探し出して答えるとよいでしょう。
具体的には、どのようなバックグラウンドから課題を感じ、課題を解決するためにどのような手法を試し、どのような結果が得られて何を感じたのかをまとめておくと答えやすいです。
また、課題解決のため、どのように周囲を巻き込み、どのくらい粘ったのかまで付け加えるとより良いです。
どんな商品に携わりたいか
製紙メーカーが製造した商品が店頭に多く陳列される中、その商品には特有の特徴を持っている場合が多いです。
コモディティ化した商品の中で、いかに自社商品の特徴が理解できているのかが問われます
商品の特徴をしっかり把握し、他社商品との違いについて入念に調べてまとめておきましょう。