【出版業界ES書き方ガイド】読まれるESのポイントを徹底解説!
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例年各企業の採用数は少ないものの、就活生に高い人気を誇る出版業界。
「本や漫画が好きだから」「本作りに携わりたい」といった理由で、狭き門である出版業界を志望する学生も多いのではないでしょうか。
一方で出版業界の現状や求める人物像、ESで見られている点は理解していますか?
ESを書く前に出版業界の業界研究をしっかり行い、どのような人材が求められているのかを理解することが大切です。
「出版業界」の市場規模や主要企業については、こちらの『【出版業界|2022年度最新版】ESの書き方から面接対策まで徹底解説!』で詳しく解説しているので、併せてチェックしてみてください。
今回は出版業界のESで実際に出た設問例をもとに、ポイントなどを紹介していきます。
目次
出版業界の現状
まずは出版業界の現状について見ていきます。
出版業界を取り巻く環境は大きく以下の2点です。
①書籍の電子化
近年Amazonが展開するKindleや楽天Koboなど多数の電子書籍が登場し、いつでも簡単にスマホで本が読める様になりました。
その結果、全世代で紙媒体離れが急速に進み、出版業界の売上は年々減少しています。
しかし出版業界も手をこまねいている訳ではなく、電子コミックの拡充などにより反転攻勢をしかけています。
2020年度の電子書籍市場規模は4821億円と推計され、2019年度の3750億円から1071億円(28.6%)増加しています。
今後も成長が見込まれており、2025年には6700億円を超えると予測されています。
②スポンサー収入の減少
新型コロナウイルスによる日本経済の低迷と人々の紙媒体離れにより、そもそも紙媒体に広告を出そうとする企業が減少傾向にあります。
それに対してSNSやWeb上に広告を出す企業は年々増加しています。
こうした出版業界の大きな収入源であった広告料が減少している点は、かなり痛手であると言えるでしょう。
上記のような「紙媒体離れが進み、書籍の電子化が加速している」「スポンサー収入が減少し、新たな収益源を確保する必要がある」という出版業界の現状を理解することで、出版業界が今必要とする人材の特徴が見えてきます。
今一度、その様な視点で業界研究に取り組みましょう。
出版業界のES設問例
1あなたの弱みを教えてください。(共通)
2 どのような仕事に関わりたいか、具体的にご記入ください。 (2021年 集英社)
3第一希望の欄で記載されたことをKADOKAWAで実現するためには、KADOKAWAとあなた自身にはどんな進化(成長+変化)が必要と考えますか?(2020年 KADOKAWA)
410年後どんな出版人になっていたいですか(2020年 小学館)
5一番アピールしたいあなたの「とんがり」部分を教えてください。 (2020年 講談社)
設問例1:あなたの弱み
こちらの質問では、あなたの短所について問われています。
ESでは「自分はこの様にして貴社に貢献出来る」と強みを押し出す機会が多いので、短所について問われると困ってしまうという方も多いでしょう。
企業としては聞こえの良い強みばかりではなく、短所も聞くことで「本当に弊社とマッチした人材か」を見定めています。
同時に「自分自身を客観視出来ているか」つまり自己分析をしっかりと行なっている人材かを問うています。
自分の短所がすぐに出てこない場合は、今一度自己分析をやり直す必要があるでしょう。
回答例
私の弱みは「継続力がなく、様々なことに手を出してしまう」点です。
私は中学校で野球部から未経験のテニス部に挑戦し、大学では未経験のアイスホッケーに挑戦しました。またアルバイトも、飲食店や家庭教師など複数アルバイトを掛け持ちしていました。この様に私が様々なことに挑戦するのは、常に「初めてのことに挑戦するワクワクを感じたい」と考えて過ごしているためです。結果として途中で新しいことに手を出してしまい、物事が継続しませんでした。
そんな私に対して両親は「色々なことに挑戦するのもいいけど、一つのことを長く続ける力も必要」と何度も言っていました。一方で、就職活動を始めるにあたって「すぐに目移りする性格を直したい」と考え始めました。
そこで私は「達成困難な目標を持ち続ける」「新しいアイデアを常に探る」という2つの施策に取り組んでいます。
その結果、1年半前に始めたボランティア活動とアルバイトは腰を据えて続けることが出来ています。この様にして、私は弱みの克服に励んでいます。
弱みを克服しようとしている姿勢を見せなければ、「向上心がない人材」と認知されてしまうので注意しましょう。
設問例2:どの様な仕事に関わりたいか
こちらの質問では、あなたのキャリアプランについて問われています。
志望理由は抽象的でも構わないので比較的簡単ですが、「入社後どういった業務に携わりたいか、そしてどの様に成長したいか」を記述するためには、OB・OG訪問などの深い企業研究が必要です。
他の就活生と差別化をするためにも、具体的かつ現実的な記述を心掛けましょう。
回答例
私は入社後、青年マンガ編集部の一員として世の中にワクワクを届ける仕事に携わりたいです。この思いに至ったのは、引きこもりで苦しんだ中学一年生の経験がきっかけです。
私は中学校一年生の頃ほとんど学校に行けず、家に引きこもりがちでした。その時私を救ってくれたのが、貴社で出版されている週刊少年ジャンプです。私は少年ジャンプを購入する時が唯一の外出でしたが、その時に同級生と会い、少年ジャンプの話で盛り上がり、友人と笑って話をすることができました。その結果、人と話す恐怖感が消え、学校へ行こうと決心することが出来ました。
その時から私は「人生を変えてくれた少年ジャンプに恩返しがしたい」と考え続けています。
そのために入社後は貴社の青年漫画の編集部の一員となり、まだ世に出ていない作者の発掘、作者がよりスムーズに執筆出来るサポートに励みたいです。
そして自分のように人生をかえるきっかけとなるような作品や心の支えとなるような作品を一つでも多く世に出し、貴社の発展に貢献します。
どういった経緯で、その職種に就きたいのかを記述する必要があります。
再度自身の経験を精査しましょう。
設問例3:自己実現のためには、会社とあなたはどの様に成長すればいいか
第一希望の欄で記載されたことをKADOKAWAで実現するためには、KADOKAWAとあなた自身にはどんな進化(成長+変化)が必要と考えますか?(2020年 KADOKAWA)
この質問では、自身の夢を実現するために会社とあなたがどの様に成長し、変化する必要があるか問われています。
ポイントは、あなた自身だけでなく、会社もどの様に進化する必要があるか記述しなければならない点です。
初めにでも述べた通り出版業界の多くは電子書籍の台頭により、厳しい経営環境にいます。
何も進化せず、今まで通りの仕事をし続ければあっという間に時代に飲み込まれてしまいます。
つまり企業側は「現状に満足せず、常に進化し続けなければならない」と考えており、そういった思いに応える人材を強く求めています。
そうした企業側の思いを汲み取って、ESを記述しましょう。
回答例
私の「日本の出版物を世界に届けたい」という思いを貴社で実現するために、貴社と私は「デジタル化を推進させ、世界展開するリーディングカンパニー」と進化する必要があります。
この様に考える理由は「日本では人口減少が進む一方で、世界の人口は年々増加している」「世界では電子書籍サービスが主要になっている」の2点です。
そこで貴社で出版されている小説を、人口増加が著しく日本のアニメファンが多い中国で展開します。そのためには、「海外では電子書籍が主流となり、紙媒体の需要は低迷している」という点を踏まえ、デジタル配信サービスの拡充と多言語対応という貴社の進化が必要です。
また、私自身も貴社で「海外展開を視野に入れ、英語だけでなく中国語も習得し、海外事業部の仕事に貢献する」と進化し、貴社の進化の一助となります。
以上の理由から、貴社は「デジタル化で世界展開するリーディングカンパニー」と進化し、そのために私は「英語と中国語を習得する」必要があると考えます。
はじめに結論を簡潔に述べてから、理由を記述するという流れは崩さない様にしましょう。
設問例4:どんな出版人になりたいか
企業側は志望動機だけでなく長期的なキャリアプランも問うことで、就活生の本気具合を探っています。
もちろん実際に働いてみないと10年後のことなど具体的に分からないと思う人も多いでしょう。
しかしここで企業が知りたいのは、「どんなキャリアプランを持っているのか」を知ることです。
深く考えすぎず、自分が携わってみたい仕事やどんな将来を思い描いているのかを記述しましょう。
ただし全く根拠の無いことを述べると、企業研究不足が知られてしまうので、OB・OG訪問などは怠らないようにしましょう。
回答例
私は、常にお客様目線を忘れない出版人になりたいです。私は趣味の動画編集の技術を活かして、企業向けにCMを制作するアルバイトを行っていました。そこではお客様のニーズよりも、納期や制作しやすさが重視されていました。その結果、人件費は削減できた一方でお得意先離れが深刻化し、売り上げが大きく減少してしまいました。
その経験から「売り上げを伸ばすことも大切ではあるが、お客様のニーズを形にすることも大切である」と学びました。
たしかに、日々の業務に忙殺されて常に作者、企業目線になってしまう出版人もいると思います。しかし私はそうではなく、書店営業の一員としてお客様が本当に求めている出版物とは何かを追求し続けます。そのために入社後は毎週欠かさず、読者と書店スタッフへのヒアリングを行います。
その積み重ねを行うことで、10年後にはお客様の声を反映でき、信頼される出版人に成長できると考えています。
10年後という未来を予想するのは困難です。
従って、自身の経験からどういった思いを実現したいのか記述しましょう。
設問例5:あなたの「とんがり」部分について
この質問では、あなたの人柄や性格が問われています。
一見すると、頻繁にESで出題される「自己PR」と同じである印象を受けます。
しかし企業側がその質問ではなく「とんがり」という言葉を選んだのには、何か訳があるはずです。
恐らく企業側は「あなたが他の人に絶対負けない何かを持っているか」といった強烈な個性をESで探っているのでしょう。
より深く自己分析を行い、これだけは「負けない」というポイントをまとめましょう。
回答例
私が一番アピールしたい「とんがり」は、一度自分で決めたものは絶対に曲げない頑固さです。
私は大学4年間ラグビー部に所属しました。入部当初、私は「必ずチームを率いる人材になる」と決め、大学4年間毎日欠かさず2時間の朝練を行いました。結果としてキャプテンに任命され、チームを全国大会へ導くことができました。
一方で、このとんがりが原因で失敗した経験もあります。それは同じく大学で部活動に励んでいる時、監督からは「ただがむしゃらにトレーニングをするのではなく、食事やトレーニング量、内容をもっと考えて取り組め」と言われていました。しかし私は前述した通り、「量をこなせば、必ず結果がついてくる」と自分の考えを貫き、聞く耳をもちませんでした。その結果、しっかりと指導を受けた後輩にすぐ抜かれてしまった経験があります。
貴社ではこの様なとんがりを「自分で立てた目標やノルマを達成するまで、決して諦めない」と活かす一方で、周りの意見も素直に受け止め、その時々でどう対応していくのが最適なのかを意識して業務に励みます。
とんがり部分がプラスに働いた経験とマイナスに働いた経験、両方記述することで説得力が増します。
自己PRの書き方
自己PRの本質
自己PRとは「自分の強みや長所を企業に伝える場」になります。
ただ単純に自分の強みや長所を伝えるのではなく、企業の求める素質を理解して自身の強みをどのように活かせるかを伝えることが重要となります。
評価の高い自己PRにするには、まず自分の強みや長所をきちんと理解することが大切になります。
また、自己PRを書く上で、企業がなぜ自己PRを聞くのか知っておくことが必要です。
企業が自己PRを聞く意図は2点あります。
1人柄を知る
企業は自己PRの内容から、企業に応募者の人柄を把握して企業と合った人材かどうか判断しています。
企業の社風にマッチした人材であれば活躍イメージが湧きやすく入社後の成長も期待できます。
逆に企業とのマッチ度が低い場合は早期退職の可能性があるため積極的な採用はされません。
2自己分析ができているか知る
自己PRは自分の強みや長所を伝える場なので、自分自身について理解していることが重要となります。
自己分析がしっかりしていればきちんと自分の強みを伝えることが出来ます。
しかし、自己分析ができていない場合は就職活動への真剣度は欠けると思われ、企業への志望度も低いものだと判断されます。
自己PRを書くためのポイント
求める人材に即した「強み」を決定する
企業へ自身の強みを伝える場合、企業のビジネスモデルを理解した上でどのような強みを求めているかを考え、自分の経験などに結び付けて伝えるようにします。
自己PRは大きく分けて3つに分類することができます。
- 個人として努力し、成果を上げることができる
- 関係者と信頼関係を構築し、課題やニーズを引き出し、解決のための提案から実行までを行うことができる
- 今までにない仕組みや企画を提案し、周囲と協力しながら実現できる
アピールしたい「強み」を論理的に述べる
上記でまとめた自身の強みをより企業に対してわかりやすく伝えるために、下記の流れにまとめるとスムーズです。
(1)強み:あなたの強みは?
↓
(2)強みの原点:強みが形成されたきっかけは?
↓
(3)強みを表す具体的エピソードは?
↓
(4)強みの方法論:強みを発揮するために意識していることは?
↓
(5)強みの活かし方:その強みを入社後にどう活かすか?
引用:unistyle
※自己PRを書く際のポイント
・注意点 ・アピールする強みに再現性を持たせること
・学生時代に頑張ったことと混同しないこと
・書き出しと締めの部分を意識すること
出版業界はどんな人材を求めているのか
出版業界全体で求める人材の特徴は大きく2つあります。
- 常に新しい事に挑戦するマインドを持った人材
- 周囲の人を巻き込んで物事を進める人当たりの良さ
常に新しい事に挑戦するマインドを持った人材
初めにも述べた通り、現在出版業界は電子書籍の台頭により苦しい経営環境にいます。
もちろんコミックや雑誌の電子化によって、奪われたシェアを取り戻そうと尽力していますが、Kindleなどの定額読み放題サービスには敵いません。
こうした環境下においては、従来のやり方をそのまま踏襲する人材ではなく、常に新しい技術やサービスに挑戦するマインドを持った人材が強く求められます。
企業としても、そうした人材を採用しなければ衰退の一途を辿ってしまう、という危機感を強く持っています。
従ってESには「従来のやり方に改良を重ねた結果、上手くいきました」よりも「不安ではありましたが、新しいことに挑戦しました」と記述する方が、採用担当者の目に留まるでしょう。
周囲の人を巻き込んで物事を進める人当たりの良さ
文系学部で出版業界を志望する場合は、ほとんどの方が営業職でしょう。
営業職では主に書店に対して、配本部数の調整や新刊のご案内、ベストセラーを作るための情報収集といった仕事を行います。
また漫画、雑誌、小説などを取り扱う書店では日々数々の新刊が出され、売り上げが伸びないと判断された書物はすぐに売り場が移動されてしまいます。
そうした事態を防ぎ、常にお客様の目に留まる売り場を維持出来るよう書店スタッフにお願いするのも営業マンの仕事です。
その様な業界なので、特に周囲から信頼される人当たりの良さは欠かせません。
ESの段階で人当たりの良さをアピールすることは難しいですが、「この人は周りから愛される人なんだろう」「この人材であれば弊社でも活躍してくれそうだ」と思ってもらえるよう、自身の経験の精査を常に行いましょう。
もちろんその他にも見られるポイントは存在しますが、出版業界が特に求める人材は上記の2点です。
何も考えずESを書くのではなく、「どういった人材が求められているのか」「そのために自分はどこを強くアピールすべきなのか」をしっかりと考えてESの記述に臨みましょう。